1. |
私の名前
05:27
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私の名前をつけたころ
こんな町の青さに
打ちひしがれては
朝も夜も忘れた
私に名前をつけたのは
そんな優しい言葉で
何を思えば
あなたを思い出せるの
私の名前を呼んだのは
丸い丸い声で
時が経つほどに
心は何処へ消えたの
私の名前を知ったころ
遠い遠い、いつかの
思い出のような
未来を思い描いたの
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2. |
くだらないことを
02:56
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まるで外は雨模様
此処は些か寒空を
取って付けた様に淡く
人の征く隙間を埋める
僕は此処で
くだらないことを思う
まるでそれは風の様
それで何時しかその音は
一寸も思い出すことなく
君の住む心を埋める
僕は此処で
くだらないことを思う
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3. |
リナリア
03:25
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そっと手を引くあの夜に
まだ心惹かれて
肌を濡らす雨の乾いたことにも
気付かぬまま明けた
花冷えの朝
あなたはどこへゆくの
日差しに目を眩ませた
束の間の出来事
四六時中は長い夢になり
目覚めぬまま過ぎた
終わらない朝
あなたはどこにいるの
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4. |
朧月夜
04:02
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あの夜のことなら忘れたりしないわ
花明かりは軈て瞬きを留めた
見慣れた街角で 見慣れないあなたの
横顔は少し綻んでいた
小さな約束を秘密で塗り替えた
風の音で他に何も聴こえない
左の耳元で囁いた言葉が
溢れないように口遊んでいた
まるで誰もいない朧月夜
あなたは何処へ帰るの
私は何処へゆくの
あの夜のことなら忘れたりしないわ
溜息混じりの慰めみたいね
あの夜のことなら忘れたりしないわ
平気な顔をして嘯いているの
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5. |
思い善がり
03:47
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家の前を通り過ぎて
街灯を揺らした北風を往なした
君の声は遠ざかりながら
街の音は不意に静けさを増した
着慣れない長袖にそっと肩を竦めて
誰にも見えぬように小さく息を吐いた
次の角を曲がる辺りで
新しい景色に出会ったとして
どんなことを思い出しても
たったの一秒に息を詰まらせる
靴音が響く度 宵の闇が迫れば
些細な思い出さえ愛しく思えたのさ
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6. |
帳の向こう
05:18
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言った通りね
がらんどうの夜はとても居心地が好い
街の外れには聴き逃したラジオの音が
微かに響いていた
カーテンの隙間から溢れる灯りだけが
時間を教えてくれる
あなたの香りだけが残ったこの部屋で
また夜が明ける
置き去りのまま去った人は
今も私を思い出すかしら
それとも今日の月の灯りに
心委ねて忘れてゆくかしら
巡り会う日はいつも夢の中で途切れて
その先を知らないまま
瞼を閉じる度に 消えてしまう誰かを
まだ忘れようとしていた
カーテンの隙間から溢れる灯りだけが
時間を教えてくれる
あなたがどこに行けど私がどこにゆけど
また夜は明ける
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7. |
朝焼けの先に見えるのは
03:28
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煙草の火が揺れている
白く煙る朝に隠れるように
君は瞼の裏で
昨日の夜をそっと そっと思い出していた
重い体を擡げ
しばらくカーテンの外を眺めて
行き交う人の中に
見つかるはずのない遠い日々を探していた
まるで違う街に紛れたまま今も
僕は此処が何処か分からずにいる気がしていた
例えばあの朝日が
君の居る街ごと包んだならば
そのまま身を委ねて
僕はいつかの遠い日々に帰るから
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8. |
片道切符
03:59
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開いては閉じるドアを
僕は何度となく見ていた
何かを待っているわけでも無いが
そこには見覚えのない顔が
幾つも通り過ぎていった
こんなことを言ったなら
君は笑うかもしれないが
毎日同じ場所をゆく電車が
見知らぬ場所へ運んでくれると
信じていたのかも知れない
君は電車に揺られる僕の
ぼやけた顔を忘れたのだろうか
君は電車に揺られる僕を
ただ黙って見届けていたのかい
折り返しで戻って
帰ってこられる程の街さ
けれどもう帰ってこない街さ
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9. |
長く永く
04:58
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地下鉄の生温い風が吹き上げる
都会の温度を感じながら 高い高いビルを見上げた
遠ざけた想い出を身勝手にまた引き寄せて
溜め息にも似た深呼吸で
憂鬱も愛しさも風に靡いて散ってゆくわ
長い長い夜を越えて 千切れた身体を拾い集めて
もう一度出会う時には もう目を逸したりはしないわ
憧れた 羨んだ 遠くで眺めていた
あなたの背中は眩しすぎて
手の届く距離には行けない
いつからか忘れていた青い空に流れる
雲の行き先を今更憂いて願って
しばらく思いを馳せていた
長く長く時が過ぎて 今日のことさえ忘れてしまっても
あの頃よりも少しだけ背筋を伸ばして歩けるわ
長い長い夜を越えて 千切れた心を握りしめて
もう一度出会う時には もう目を逸したりはしないわ
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10. |
あてもなく
02:47
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時が過ぎるよりも早く
ヘッドライトは都会を過ぎる
埋まるこの身体よりも
遠く沈みきった陽を想い出していた
今人混みに紛れ宵闇に飲まれ一人漂う僕は
明日の朝に焦がれた平凡な想いに憧れたままで
俯くことさえ忘れて空を仰いだ夜更けの僕に
何も知らぬ星は光る 僕が見た姿は誰も知らない
僕の声はどこまでこの足はどこまで
辿り着けるのだろう
たとえばこんな日には深い溜め息で全てを許して
こんな街に紛れて行き先も忘れて一人揺られる僕は
何食わぬ顔をしてきっといつまでもこんな風に
生きてしまうの
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11. |
むかしむかし
05:32
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”通りすがりのまま見知らぬままの二人なら
遠い昔のことを今も羨んでいたかしら”
繰り返し思い出せば
君がいた眩しい朝も
繰り返すことなどなく
気づけば南風に変えてくれるさ
ふと静まり返る街に想いを馳せている
もし君の名前を忘れてしまう日が来ても
繰り返し思い出すよ
手のひらに通う血潮を
繰り返すことなどなく
生きていた僕らのことを
繰り返し思い出すよ
あの日から変わらぬ君を
繰り返し思い出すよ
いつの日も変わらぬ僕を
繰り返し君のことを
繰り返し思い出すよ
遠い日の先に佇むその笑みを
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